この本は著名な作家達の伝記ともいえるし、一つの『世界』を扱った本であるともいえる。ロストブックス――失われてしまった作品達――を通して、ありとあらゆる時代の、さまざまな国の人々の生涯にさえ触れていく本である。
スタートは紀元前ギリシャから。そこから現代に近づいてくる形で文豪達の未完の大作や、当時の資料でしか名前を伺えない迷作(?)たちについて想像を膨らませる作者、スチュアート・ケリーは書評家であり、その豊富な知識には被った帽子も脱げてしまう。原本では有名・無名、問わず79人も紹介するが、本書収録は25人。カフカ、ダンテ、ヘミングウェイ、ドストエフスキー、等等、馴染みのある名前が並ぶ訳者が編訳したものとなっている。
自分がこの本を読んで気付いたのは、歴史は継続していくものであり、本は人が書いたものなんだな、ということ。そして本は文字なしには成り立たない、という基本的なことだった。
どれだけ昔のことを知ろうとしたって、限度と言うものがある。ギリシャ付近の人物・本を取り上げる際には引用が目立ち、やや退屈に思われるかもしれない。
しかしながら15世紀以降の欧州に視点が移ると、よくよく表現が生き生きとしてくる。そして当時の民衆のやっかみも、そう今とは変わらない。意地の悪い言葉と、悪評に影響を受けた作家もいる。
それだけに作者の意思で燃やされてしまった文章たちには未練を感じてしまうし、不慮の事故や人災、盗難で失われてしまったものには憤りさえ感じてしまう。
読書っ子に読ませれば、国語だけでなく世界史にも強くなる優れた、おもしろい本ではなかろうか、と思う十代。