「わたし、自分から、迷子になるんだ!」
デパートで、母さんの後をついて歩いていた珠緒(たまお)は、ふいにそんな気持ちになります。子どもの気持ちをちっとも考えてくれない母さん。自分勝手に、何もかも押しつけてくる母さん。そんな母さんから、わざとはなれて迷子になってしまった珠緒は、自ら「迷子の天才」と名のる少女あんずに出会います。
家に帰らないで、デパートで暮らしているというあんず。そんなことができるの? 信じられない珠緒。
「だからさ、人間は、特に大人ってのは、自分が見たくねえものは見ねえってことなんだよ。すごいだろ。誰にも気にされない。怒られない。命令されない。やりたい放題、好き放題だ。」
それが迷子の世界なんだと、あんずはいいます。あんずのいった通り、デパートで何をしても、大人たちには珠緒とあんずが見えていないようでした。ところが、見えないものが見える大人もいました。それは、「迷子狩り」。
珠緒とあんずを見つけて追ってくる恐ろしげな迷子狩り。必死に逃げるふたり……。と、思春期の少女の心がリアルに描かれつつ、気がつけば、ちょっぴり悲しくて、とても愉快で不思議な迷子の世界に、いつしか読者も誘い込まれています。子どもの頃、誰もが感じるデパートへの憧れや怖さが、物語にうまく生かされています。親子読書におすすめです。