ラドマス湾で起きた転落死事件の取材のため、現地を訪れた
小説家で素人探偵のシェリンガムと、その従弟のアントニイ。
当初その転落死は事故と思われていたが、状況証拠から、被害者の従妹で、
遺産相続人でもあるマーガレットによる殺人の疑いが濃厚になっていたのだ。
マーガレットに会ったアントニイは、たちまち彼女に
一目惚れし、シェリンガムも彼女の無実を確信する。
かくしてシェリンガムは、スコットランド・ヤードの名刑事・モーズビー警部を
向こうにまわし、マーガレットの容疑を晴らすべく、捜査に乗り出すのだが……。
本作では、墜死事件のほかに、毒殺事件も発生するのですが、その二つを結びつける
シェリンガムの解決がじつに秀逸(何といっても、あの
××よりも、八年も先んじている
のですから脱帽です)。
しかもその独創的なアイディアを、ダミーの解決として使い捨てることで、
予定調和なカタルシスを放棄し、代わりに、シェリンガムの特異なキャラ
を鮮烈に印象付けようとするところが、バークリーの真骨頂と言えます。
要するに、前二作から一貫してモチーフとされてきた本格ミステリの“お約束”に対する徹底的な
相対化とアイロニーが、本作において、“迷走推理機械(?)シェリンガム”として結実したのです。