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主人公のからむ会話やモスクワの街の描写では、折々、うまい調子で、社会主義国家ソビエト連邦が語られている。目立つのは、その国家体制と権力構造だ。役人のわいろねだりとそれを厳に禁ずるソビエトの法律をさらっと述べる。そしてやがて、主人公は巧妙にしかけられた陥穽に陥る。仕掛けたのはロシア人たちだけだろうか、とやがていぶかしむ主人公。
ブレジネフの名やゴルバチョフ、ライサが登場するのは、この小説により真実味を与えている。
現在から過去に戻り、そしてまた現在に戻る、そういう物語の組み立てが良い。
最後の一行には、思わず身の毛がよだった。
この作品での話の怖さは序の口で、ソビエトからロシアに変わった現在こそにさらなる恐怖が存在するのだろう。怖いのはこの作品中にあるのではなく、作品冒頭と最後の一行に続く「その後」であろう。ぜひ著者に続編を期待する。
私は、ロシア語を学びたく、1970年代の後半に外国語大学のロシア語学科を受検した。実際はほかの進路を選んだものの、もしもロシア語の道を選んでいたら、社会に出て仕事での任地としてソビエトへ赴くであろう可能性は高かっただろう。つまり、私が主人公と似た境遇に身を置いたかもしれない。そんなことを考えた。
読後、著者の「最後の逃亡者」を求めて新書店をまわっても見当たらず、古本店をあちこち巡り、ようやく昨日、その文庫版を手に入れた。
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