リトヴィネンコの暗殺をめぐる一件は、「元FSB将校がロシア政府の不正を暴露してその報復に殺された」くらいにしか考えていなかった。しかし、本書を読んでこれはもっと奥の深い「闘い」だったのだと考えさせられた。
まず何を告発したのか(意外と知られていないのでは)、どんな風にしたのか、などを知るためにもぜひ一読をお勧めしたい。そしてその信ぴょう性は'1.いくつかの点はロシア政府側も認めていること'2.いくつかの点はBBCなど西側メディアも同様の主張をしていること'3.ロシアで同様の告発をした人が次々と死んでいく「統計的にありえない」展開、などがある程度裏付けていると思う。
また、冒頭に書かれているリトヴィネンコのロシア脱出過程や、フェリチシンスキーがリトヴィネンコを想う気持ちにはものすごく人間味を感じるし、末尾に書かれているリトヴィネンコ最期の言葉(毒を盛られたあと病床で語る遺書的声明文)には死を覚悟した者の強さと荘厳さがある。
「諜報」とか「暗殺」とかはあまりにも遠い世界のことすぎていまいちピンと来ていなかったけど、本書を読んでこの一件がもっと人間的感情に支えられていることを知れたような気がした。