ロシア人として生まれ、日本国籍を取得したエコノミストの自叙的なロシア論。冒頭で出てくるソ連時代と今のモノの豊かさの違いに唖然とする。ソ連と言えば、何を買うにも行列なのだが、日常体験に根ざした著者の言葉は面白い。ソ連国内で出回るカニ足は左ばかり。太くて身のある右足はみんな輸出してしまうからなんだとか…もちろん商品を選べるなんてことはなく、ただ渡されるものを受け取ることしかできない。それに引き替え、今は24時間営業当たり前のハイパーマーケットにずらっと商品が並ぶ。「ソ連時代だれがこんなことを想像できたか」と著者は言うが、20年でこんな状況になるとは、誰しも思わないだろう。
このほか、ロシア人の年中行事、閉鎖都市での幼少期を振り返った3、4章は、ロシア人日常をよく描いている。正月、親戚が集まり、たくさん料理を作って、指導者の新年の挨拶を聞き、プレゼントを交換するロシア人たちはいかにも楽しそうだ。日常生活について書かれた本というのは余り読んだことがなかったので、興味深く読めた。国家が崩壊するという、想像を絶する体験を経てもなお、イベントを楽しむロシア人の心というのは変わらないと感じた。