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その際、政府要人・ゲリラ暗殺の急先鋒となったのがシカリオと呼ばれる
殺し屋たちだった。シカリオ部隊の幹部たちは、そのほとんどがどん底の
スラムから犯罪に犯罪を重ね這いあがってきたアウトローだったという。
本書は、そんな時代に生きた女シカリオの物語である。
本書の時間設定は、主人公ロサリオが銃弾に倒れ息を引きとるまでの数時間。
語り手で上流階級出身のアントニオ(ラストではじめて名が判明する)が、
病院に担ぎこまれたロサリオに付き添いつつ、横恋慕する彼女を追憶する。
筋を追うのは止したほうが良いだろう。読者はその疾走感に、ただひたすら
身を委ねるべきなのだ。この乾ききった青春小説・甘ったるい犯罪小説を、
メデジンの恐るべき夜を味わうべきなのだ。
フラッシュバックなど映画技法を用いた表現法や、若者特有の俗語会話などを
散りばめた作風はむしろ、初期のバルガスジョサ『都会と犬ども』あるいは
近い世代でグアテマラ出身のロドリゴ・レイローサを髣髴とさせる。
なお、俗語訳についての不満はさておき、指摘をひとつ。
本書が2000年に獲ったのは「スペインのハムレット国際小説賞」ではなく、
国際推理作家協会の「ダシール・ハメット国際小説賞」では?
ラテンアメリカのみならず世界文学の新たな才能の登場に、まずは喝采。
小説内でしばしば前後する時間、そして空間の飛躍。それだけではない。登場人物の心さえもが読者の想像の及ばないところに飛んでいってしまうのだ。私は繰り返されるあまりにも唐突な飛躍に疲労してしまう。この時空の飛躍は、「百年の孤独」には更に大胆な形で現れているが、本書ではより滑らかに、映画の中のカメラがスパンするように取り入れられている。
もう一つの暴力について。本書や「百年の孤独」で繰り返される殺人はあまりに日常的で、人が死ぬという感覚を麻痺させる。さらに驚くべきことは、日本の読者にはおそらく限りなく非現実的なこの殺人が、この都市においては本当の日常であり現実そのものであるということだ。ここに最大の異質感、違和感を感じる。しかしこの感覚こそがラ米文学の特徴であり最大の魅力だ。
そういった意味で本書はマルケスの系譜を確実に引き継いだ作品である。
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