1770年に、フランスの王太子妃として、お輿入れすることになったマリー・アントワネット、14歳の彼女がたどったウィーンからパリまでの25日間の旅程を解説した本書は、婚約に至る経緯を含めたヨーロッパの政情、交通事情(馬車、道路)、宿泊先の受け入れ模様(歓迎行事など)を切り口に、作者のテーマに対する情熱も手伝ってか、当時の様子が生き生きと伝わってくるようで、大変興味深く読めました。特に、マリー・アントワネットをもてなすために、宿泊場所の調度品、道路の保全、食費、護衛などにかかるコストに、各宿泊先の修道院、大都市、村が四苦八苦する記録が残されており、中には、財政が破綻し、取り壊された修道院もあったそうで、驚きました。ハプスブルク家の威信をかけた花嫁行列の陰で苦しんだ庶民の存在を、マリー・アントワネットは知る由もなく、まるで将来のフランス革命を暗示させるようで面白く、また、歴代の神聖ローマ皇帝を独占したハプスブルク家にあって、18世紀に一度、バイエルンに帝冠を奪われた事情なども関連しており、興味の尽きない内容も良かったと思います。『ヴェルサイユのバラ』でも描かれた、国境の中州に作られた仮御殿で、マリー・アントワネットが、フランス側に引き渡される場面では、故郷から持参してきた扇一つ(モノクロの写真があります)だけが許されたなど、詳細が分かって良かったと思います。