「ロカビリーギターバイブル」というタイトルですが、表紙を見てもわかるようにブライアン・セッツァーをフューチャーした一冊です。ロカビリーに関する記事は歴史をアバウトに追った3ページの記事と、ロカビリー系のディスクを紹介した6ページのみ。ならばブライアンのファンが喜ぶような内容かと言えばそうではなく、彼の軌跡や演奏スタイルに関する記事は皆無。掲載されているのはインタビューと機材紹介のみという、なんとも消化不良な内容になっています。
本誌の目玉である「ロカビリー・ギター実践講座」もしかり。山口憲一氏の演奏は素晴らしいのですが、ほとんどがリードの小ネタフレーズばかりで、バッキングは相変わらずのパワーリフのみ。ギターをかき鳴らしながらめまぐるしくコードを変える、ブライアンが得意とするカッティングスタイルには言及されていません。そもそも掲載されている「ROCK THIS TOWN」のスコアが間違いだらけ。イントロがオープンDじゃなくバレーDって、いくらなんでもそれはないでしょう。
ロカビリー・サウンド徹底検証も、さまざまなギタリストのセッティングが解説されているものの、とどのつまりはオールドの6120とベースマンが最高!という結論です。それができれば誰も苦労しない(ブライアンもインタビューでオールドの6120はもはや手に入らないと言及しています)わけで、じゃあいまの機材で再現する方法は何かと読み進めると、アンプの低音を上げコンプとオーバードライブとディレイでサウンドを作れという拍子抜けする内容。これならば素直にLine6やG-DECなどのシミュを勧めた方が良いと思います。
全般に言えることですが、本書では徹頭徹尾「ロカビリー=ブライアン・セッツァー」「ロカビリーサウンド=オールドの6120&ベースマン」という思想に貫かれています。それはそれで結構なのですが、ただひたすらブライアンを崇め入手困難な高い機材を褒め称えたところで、多くの読者にはうらやましさと絶望しか生まれないでしょう。それよりもたとえばGretschのelectromaticは使えるか否か、シミュや小型チューブアンプ、ペダルの活用など、現状に即した情報を掲載して欲しかったです。
とにかくブライアン・セッツァー本としては中途半端で、ロカビリー本としてはあまりに物足りない内容でした。むしろ過剰なまでの懐古主義とブランド信仰に、ロカビリーはもはやファッションにすぎないのだという認識を強くさせられます。これを「バイブル」と呼ぶのはかなり抵抗がありますし、これが「バイブル」ならばロカビリーが衰退するのも当然だと思わされる一冊です。