レーニンについて、トロツキーが書いた本。
トロツキーは、チェ・ゲバラと並ぶ、中二病的な革命家英雄視の中でも最大のヒーローの一人であり、後に否定されたスターリンとの確執もあり、本来あるべき社会主義の体現者のような印象を一部の人は抱いている。また、かれはレーニンの同志であり、直接かれを知っていた。だから一次情報としての本書の価値は否定しがたい。このため、本書が非常に優れたレーニン伝であるかのような印象が一部にはある。
確かに本書は読み物としてはおもしろい。トロツキーは超一流のアジテーターだけあって、エピソードの盛り上げ方はとても上手だ。
しかしながら本書は、レーニンについて基礎知識のない人が一からまともな理解を得ようとするにはほとんど役に立たない。基本的に、レーニンの悪いところ、ダメなところは一切書いていない。トロツキーは、スターリンが正しいレーニン思想をゆがめてしまった(そして自分こそは正しい(けんかする前の)レーニン思想の伝承者である)と思っているので、レーニンを悪く書くはずもない。そして基本的にはレーニンと同じ党派に属してきた人物だから、客観的に見ればレーニンがまったく一貫性のない党派的なふるまいを見せても、それを公平に描くことはない。身内びいきが非常によくない形で満ちており、現代におけるレーニン理解のベースにするにはあまりに偏っている。
また、トロツキー自身も書いているとおり、まだ完成したものではなく、部分的なメモと回想記にとどまっている。革命後の話はほとんどない。
したがって本書を読んでレーニンについて何かわかった気になるのは大変危険。サーヴィス「
レーニン (上)」などで全体像をきちんと把握して、それについてのエピソード集として流し読みするのが適切。