この作品集には、三つの「二人の物語」が収められている。
マラマッドさんは、不思議な作家だ。
表題作「レンブラントの帽子」では、
美術学校の教師として働く若い美術史家が、
同僚の年配の彫刻家に放ったあるひとことによって
思いがけずふたりのあいだに、生じてしまった事態。
おこってみたり、しょげてみたり、
ふたりの「おとな」の間におこる距離感は、
ときに滑稽で
彼のなかの煩悶を、延々となぞっているようで、
それが、ちっとも退屈しない。
ああ…あるある、と思わせて、無駄なことばがまったくない。
するりと、誰しもの経験のなかに入っていく。
「引出しの中の人間」も
「わが子に殺される」も
自然に、夢中に文章を追っていくうち、
終わったあとは、静かに余韻が広がる。
なんともいえない読後感。
復刊されるにあたって、選ばれた3作は
ひとのおかしさあったかさに、あふれています。
頁を閉じた後も満たされる、静かなきもちになる
そんな小説に、本当に出会えてよかったな
と思える一冊です。