本書の対象とする19世紀ヨーロッパは、実際には1848年のフランス2月革命から1918年の第一次大戦終結までの約70年間。一方、実用的な写真技術としてダゲレオタイプのカメラがパリで公表されたのが1839年であって、この時代の実際の姿を後世まで伝えることになった。本書は多くの貴重な写真を集めて多面的な構成によりこの時代の実像を伝えることに成功している。
ヨーロッパは産業革命の時代、ナポレオン三世がパリを大改造したのをはじめ、ロンドン、ウィーンなどの都市は今に残る近代的な姿を整えた。1851年にロンドンで初めて開催された第一回万国博覧会、1900年のパリ万博ではエッフェル塔が披露された。そして世紀末を飾る芸術や文化の輝き。一方、この時代は革命と戦争の時代でもあり、第一次大戦が終わると、ハプスブルグ帝国やロマノフ帝国など長く続いたヨーロッパの多くの王家がなくなっていた。
この時代は、日本の幕末から明治時代にあたっている。普仏戦争でフランスがプロシャに敗北し、ドイツ帝国が成立したのが1870年(明治11年)、また当時のロンドン市街の写真を眺めながら漱石の姿を想像するなど日本と重ね合わせて眺めると一層、興味が深くなる。