このDVDは非常にユニークな作り方をしている。
コールハースのインタヴューはぎっしりと収録されているものの、彼の設計した建築作品の画像はほとんど紹介されない。
そのかわりに、建築模型が出てきたりする。
先頃の北京オリンピックにおいても、世界中の有名建築家たちがそれぞれ力作を設計しているので、今の中国はさながら現代建築の最先端博覧会のようなことになっている。
コールハースもオリンピック施設ではないが、CCTV(中国中央電視台)という国営TV放送局のビルを設計し、その大胆なデザインは世界中の人の度肝を抜いた。
コールハースとともに世界的に人気のある現代建築家はヘルツォーク&ド・ムーロンや、ダニエル・リベスキンド、ジャン・ヌーベル、ザハ・ハディド、安藤忠雄といったところだろうか?いずれも建築界のノーベル賞といわれる「ブリツカー賞」を受賞している建築家だ。
ただ、こうした世界の最先端で活躍する建築家とコールハースを比較した時、どうしても感じてしまうものがある。それは、実に得体の知れない奇妙な印象を見るもの、訪れたものに生じさせる独特の印象で、極めて異質なものといえる。
それは明らかに先にあげた有名建築家たちには見られないもので、ある種の「おぞましさ」であり、極端にディテール(細部)を排除したぶっきらぼうともとれそうな、「伽藍」的空間、「邪魔な柱」、「傾斜」がきつすぎて奥に行くと必ず頭がぶつかる「天井」、「階段の段差」によって生じたデコボコの天井に張型を一切かぶせずに、そのまま下の階の天井としてしまうなど、「合理と不合理」、「斬新とやり過ぎ」が渾然一体となった独自の建築空間を作っている。
そうしたことについて、具体的な説明はこのDVDでしているわけでもないのだが、何回も注意深く観ることにより、彼の「戦略」というものが、視聴者にたどれるような作りになっている。
だから、このDVDは「建築映像」目当ての人には肩透かしを食らわし、コールハースが何を考えて設計をしているのかを知りたい人には、途方もなく大きなもの与えてくれることであろう。