屋敷から出たことのないガラス細工のような少女。彼女の世話を一手に引き受け、彼女のすべてである青年。そんな、退廃的にも美しい世界から物語は始まります。
いったいこの閉鎖空間から物語がどう展開するのかと思ったら、ふたりの生活を破る存在が現われ、それによって大切な存在を失ったヒロインであるクリステルは、外の世界に出て行く決意をします。
何よりも大切な存在・ヴィリのために変わっていくクリステル。静かに穏やかに始まった物語はだんだんアクション風味を加えてハラハラドキドキ、ただただおとなしかったクリステルはヴィリのためにすべてを投げ打ち、そんなふたりの運命は。
それでも、どんな展開になってもどこまでも透明感を失わない、美しい、でも美しいばかりではない物語。クリステルはどこまでもいい子で本当にかわいらしく、ヴィリの一途さはクリステルがうらやましくなるほど。丁寧なレースのように編まれた物語は読み応えがあり、読み終わった後はため息です。
前作を読んだ方には懐かしい名前が出てきて楽しいですし、そうでない方にも十分に楽しめる読みきり作品です。こちらもまた、明咲トウルさんの美麗なイラストが見ものです。