レビューには毀誉褒貶が多い様ですので、誰にでもお奨めできるわけでは無いようです。その理由として、ヴェネツィア映画祭受賞作であることや、反戦映画、戦争アクション映画など、特定の角度からの期待がある方程、評価が低くなるようです。私は本作を、イスラエル版「
ディア・ハンター」と見ました。特に好戦的でもない普通の若者が徴兵され、「簡単な作戦」という見込みだったにも関わらず、予想外の激戦に巻き込まれ戦争の悲惨な面を体験する。開戦初日の一日に凝縮されている点は「ディアハンター」とは異なりますが、両作とも基本的に自国視点・参加した若者視点に留まり、敵方を描いていないなど(巻き込まれたレバノン市民の悲惨さは出てきますが)「自国が引き起こした戦争を客観的に見れるようになる途上にある」という点で共通点があります。米国映画は「ディアハンター」前後からヴェトナム戦争を一方的に描く作品からより大きな視点で描く作品の登場へと舵を切きりましたが、今後のイスラエルにもそんな将来が期待できそうな予感も抱かせる作品でした(とはいえイスラエルではなかなか難しいと思いますが)。
いくつか留意点を挙げておきたいと思います。
・他の方のレビューに「戦車兵4名があまりにヘタレでありえない」とありますが、「
戦場でワルツを 完全版 [DVD]」でも戦場が初めての戦車指揮官が登場しており、本作同様、最初の迎撃で撃たれて直ぐに戦車から逃げ出している話が出てきます。また、本作の監督は20歳の時、レバノン侵攻作戦に砲撃手として参加しています。本作が、リアリズムよりも、徴兵された兵士の主観に残る記憶を描いているという意味で、少なくとも監督にとっては、本作のような体験だったのだと思います
・本作が「侵攻作戦の初日」であり、「簡単な任務」とされていた点も忘れてはならないと思います。また、歩兵よりも鉄壁に守られ、砲撃や威嚇をしていればよい、という意味でも、新兵を配置し易い場所に置いたとも解釈でき、更にはラスト付近で明らかになる作戦自体のおかしさから、捨て駒部隊にスキルの乏しい兵士を配置した可能性もあります。
・砲撃手が撃てない点も「ありえない」とマイナス評価に繋がっているようですが、射撃上手と殺人は明らかに異なります。作品末尾近くで深夜の敵地をやみくもに、理性を吹き飛ばしながら突破してゆく場面があります。あのような理性も吹っ飛ぶわけのわからない戦闘を潜り抜けるうちに、殺人が行える兵士に育つのが(普通の人の場合)普通なのではないでしょうか?繰り返しになりますが本作は「初日」の話です。そこでいきなり人を撃つ立場に陥ることは重過ぎだと思います。逆に土壇場に追い詰められて、初めて戦車指揮官が指揮官らしくなりますが、同時に普通の人としての何かが壊れた印象を受けました。
このような点に留意しておけば、特におかしな作品では無いように思えます。
戦争は、近年益々電子化され、リモート兵器などで「殺人」の感覚なくしての戦闘が益々可能となりつつあり、益々普通の人でも参加可能となって来ています。「今更「西部戦線異状なし」のような作品を作られても」という感想も見かけましたが、兵器が進歩する程、「以前なら参加できなかったような人」が参加できるようになり、戦争がトラウマとなり人生が崩壊する人が出続けます。こういう作品は、今後も作られ続けられるべきかと思う次第です。
最後に。英語版のレビューを読むと、どうも米国発売のDVDには特典映像としてイスラエル国防軍のコメントが掲載されているようです。日本版に無いのが残念です。あと、戦車はメルガバでは無くセンチュリオンです。
私的には星4ですが、全体の評価が低いので一つ増やしました。どうも、本作に低評価をつけられている方々は、戦争に幻想を抱きすぎているように思えます。日本版DVDのパッケージも誤解を招きやすいので、英語版と同じパッケージにした方が良かったと思います。