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本書では警察官、大企業の重役、犯罪グループ、闇社会等、極めて個性的な人物達が登場する。
結末に向かう過程で悪夢は繰り返される。まさに絶望そのものだ。
これほど吐き気を感じる読後感は、後にも先にも経験がない。
とはいえ本書は傑作である。登場人物達の事件を巡る攻防は読み応え十分だ。
嫌悪感を与えながらも、ここにはリアルな人間が包み隠すことなく描かれている。ただ合田雄一郎はやさしく成り過ぎたか。
僕らは生きていく中で、好むと好まざるとに関わらず、社会的立場というものを得てしまう。
さらにその背負った立場ゆえの葛藤、呪縛にもがき苦しむ。その姿こそ本書の最大の魅力だと思う。
本書の題材が、1984年に世間を賑わせたグリコ・森永事件であることは明らかだ。この事件にまつわる様々な説が、物語りの中にちりばめられている。「日本はどうなってしまうのか」の一文は、絶望感に対する著者の強いメッセージである。本書はミステリー・社会派作家としての、著者の最高傑作である。
長編の利点であるし、高村薫の小説の利点でもあるのだが、いろんな読み方が可能だろうと思う。社会的事件発生のメカニズムとその発生源への考察、大企業の危機管理のあり方、男たちの誇りのあり様とその失意のあり様、幾つかの隠れた愛の形。
ラスト前の簡単に触れられている事件後の半年の経緯。実はこれだけでも一冊の長編ができる内容があるのだが、高村薫は語らない。このあたり、スルメのように美味しい小説ではある。
ラストの数ページは最近の長編の中でも白眉であった。このラストだけは文庫版「全面改稿」でも変えて欲しく無い。
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