この映画については、某ミステリ小説の解説者が、ミステリ映画のベスト・ファイブに挙げ、「ミステリー・サスペンス映画ベスト150」(文春文庫、1991年)の36位に入っている作品と紹介していることを知り、早速、どんな映画かと、興味津津で観てみた次第である。
この映画は、見るからに純朴そのもので何も知らない老婦人が、5人組の泥棒たちに現金輸送車を襲う計画に利用されるのだが、善意溢れるその老婦人の純真無垢な対応に、利用するはずの5人組の泥棒たちが、逆に、たじたじとなり、振り回され、きりきり舞いさせられるというお話だ。
観ていると、途中までは、評判ほどでもない、ありきたりのドタバタ喜劇の一つかとも思える展開なのだが、後半になると、ブラック・コメディといわれるゆえんが明らかとなり、結末では、コメディ・タッチの中にも、最初から緻密な伏線が張られていたことまで明らかとなる。こうした類いの作品が、ミステリ・サスペンス映画の範疇に含められるかどうかは別にしても、「ブラック・コメディの傑作」の名に恥じない作品とは断じていいだろう。
ちなみに、この作品は、イギリス・アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞しており、ほとんど素のままとも思えるほどの自然な演技で老婦人を演じ、最優秀女優賞を受賞したケイティ・ジョンソンと、5人組の泥棒のボスを演じる名優アレック・ギネスの好演も光っている。1955年公開作とは思えないほど、カラーの画質も良い。