太陽系帝国の大執政官ローダンの権威を失墜させようと目論む敵の陰謀に挑むテラナーの活躍を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第287巻。本巻の執筆者は、新旧の競演曲者クナイフェルと古強者ダールトンです。惑星プロフォス近傍で漂流していた小型宇宙船内から回収された記録カセットには驚くべき内容が録音されていた。本書の開幕は新サイクルに挿まれた軽めの幕間劇として、久々に弓矢の名手で蛮人サンダル・トークの活躍が楽しめます。
『レディと蛮人』ハンス・クナイフェル著:秘密情報局長官デイトンはカセットの内容の真偽を確かめる為にサンダルと、ローダンの恋人と噂される女性技術者オラーナ・セストレに秘密任務を託し惑星プロフォスへと派遣する。サンダルがプロフォスの酒場で大勢の喧嘩っ早い男達と大乱闘を繰り広げ、挙句の果てに警官に逮捕され留置場にぶち込まれるエピソードが痛快無比です。『天空の金属』クラーク・ダールトン著:ローダンはアトランと共に再び旗艦《ティモール》で惑星アスポルクへの潜入を試みる。やがてグッキーは惑星住民アスポルコスが天空の金属と呼ぶ物質で出来たとさか飾りを頭部につけている事に秘密がありそうだと気づく。グッキーが自ら実験台になって転送機に挑み、原子の組成がいかれた状態で実体化してしまい、無二の友であるアトランが心配しておろおろする場面にハラハラドキドキさせられ、胸が締めつけられる思いがします。
本巻の翻訳者は初登場のお二方、田中栄一氏と赤坂桃子氏です。代表して田中氏のあとがきは、ご自身が代表を務めるドイツ語翻訳工房フリューゲルという東京の翻訳会社を紹介し、昔に早稲田の古本屋街で買い求めて読んだローダンの思い出を綴られています。ダールトンはグッキーを主役にして大活躍させてくれていますが、本サイクルの暗いムードを反映してか何時になく真剣で陽気なおふざけが封印されているのが残念です。今回はやむなく我慢し次回に期待しましょう。