本巻では印旛沼事件直後の1971年8月中旬から10月下旬の栗駒脱走までが描かれている。内容は赤城の『十六の墓標』など関係者の証言に概ね依っているが、しかし本巻は『十六の墓標』の内容をそのまま再現したものではない。「ここは伏線を張るとこだろ」と思われるのに伏線が張られていない、あるは伏線を張ることを避けているように思われる箇所が存在している。
「張られていない伏線」とは、名称問題を巡る筑波との対立、そして薬師の「過去」である。名称問題については、『十六の墓標』では赤色軍とのやりとりも含めかなり詳細に書かれているのに対し、本巻では注意しないと見落としてしまうくらいあっさりとしか触れられていない。薬師の「過去」についても、『十六の墓標』と読み比べると、これに触れることを意図的に避けているようにさえ思われる。
しかし、これらの「伏線を避けている」ことには、一定の正当性がある。赤城は当時、党派間のヘゲモニーの問題や性の問題について、ほとんど注意を払っていなかったという。『十六の墓標』でこれらのことに詳しく触れられているのは、あくまで事件後に過去を振り返って「そういえばあの時。。。」と思ってのことであろう。当時の赤城は、まさに本巻で山本直樹が描いている程度にしかこれらのことを心にとめてなかったのではないだろうか。
山本直樹のこのアプローチ(意図的なものか直感的なものかは分からないが)は、本巻を読む限りでは成功しているように思われる。「いかにもそれっぽい伏線」は排除され、より純粋な形で組織は徐々に狂気を帯びていく。あるいは「伏線」を伏線と見いだせないことこそが組織の狂気への伏線なのか。。。山本直樹がここから先をどう描いていくのか、期待と不安と共に目が離せない。
なお、「レッド」は連載も読んでいるが、今のペースだと伊吹(4)が死ぬのは早くて7巻の後半頃か? あと本巻には2巻以来久々にエロがあります。