いや〜、やっぱり面白いわこの映画!
寝ようかどうか迷っていたド深夜に、本ソフトが届いているのを思い出して「ちょっとだけ観るか・・・」と観始めたらもうあとはノンストップ。「ふ〜、面白かった!」とつぶやいた時はもう朝の5時。折りしもレッド・サンが昇らんとしていた(笑)。
1870年、日米修好の任務を帯びた大使、坂口備前守(中村哲)と黒田重兵衛(三船敏郎)は、アメリカ大平原を横断する列車で、東に向かっていた。そこへ、リンク(C.ブロンソン)とゴーシュ(A.ドロン)率いる強盗団が急襲。金品と共に、大統領に贈るはずだった宝刀を奪われてしまう。仲間に裏切られ、九死に一生を得たリンクを道案内に、重兵衛は宝刀奪還の途へ出る。ゴーシュの居所を知る情夫のクリスティーナ(U.アンドレス)を捕虜に、盗賊団のアジトへ向かう途次をコマンチ族が襲う!
はじめにミフネありき。
この映画を観た方は、サムライ・黒田重兵衛の描き方がきっちりしていて、とにかく「フジヤマ・ゲイシャ」のノリで侍を噴飯物のキワモノ描写しがちな洋画の中にあって『レッド・サン』は天晴れな作品とお感じになると思う。それもそのはずで、この映画を企画したプロデューサーのテッド・リッチモンドが、「ミフネが演じるサムライが出る西部劇」を作りたいと熱望したのがそもそものきっかけだったのだ。そしてわざわざ来日し、三船本人に会って快諾を得、ハリウッド製作で企画を進める。監督にはエリア・カザン、ジョセフ・L・マンキウィッツ、ラルフ・ネルソン、サム・ペキンパー、そして共演者にはクリント・イーストウッド、ポール・ニューマン、カーク・ダグラス、チャールトン・ヘストン、ロバート・ミッチャム、リー・マーヴィン・・・といった錚々たる名前が挙がったが、この企画には前途多難な運命が待ちうけ、パラマウントに継ぎワーナーと立て続けに頓挫し、アメリカでの製作は断念。フランスのプロデューサー、ロベール・ドルフマンに話を持ち込み、『夜の訪問者』でタッグを組んだテレンス・ヤング監督でついに製作が実現。このラインからチャールズ・ブロンソンが共演者に決定し、三船も製作陣と共に、多忙なアラン・ドロンを口説き落とし、この黄金トリオが誕生する。ドロンの出演シーンが少なく感じるのは、スケジュール上のやむを得ない事情があったのだ。尚、最終的な脚本クレジットはレアド・ケーニヒとなっているが、製作が具体化してからは橋本忍が執筆している。諸事情で残念ながら降板するのだが、三船自身も企画・脚本の段階から参加し、「侍が日本人として恥ずかしくないように正しく描かれなければいけない」と熱いディスカッションを重ねたという。
『レッド・サン』は、初めて侍が登場した西部劇にして、見まごう事なき「大和魂」が込められた映画なのである。
この映画の面白さに、三船とブロンソン演じる対照的なキャラクターがある。礼節・信義・誇りを重んじる重兵衛に対し、己の欲に忠実な荒くれ男リンク。つまり凸凹コンビ、一種のバディーものともいえるのである。鬱陶しい重兵衛を何とか撒こうと、リンクはいきなり急斜面を転げ落ちるが、重兵衛は体勢ひとつ崩さず悠然と斜面を駆け下りてついて来る。拳でもの言わせようとすると「柔よく豪を制す」の心で投げ飛ばされ、棒で殴りかかれば剣光一閃、あわれ棒は微塵切り。泣く子も黙る盗賊団のボスも、サムライの前では憎めないユーモラスなキャラクターになってしまう。
銃対剣の戦いも、重兵衛は真っ向からむかって行くような荒唐無稽なまねはせず、急襲スタイルで敵を斃してゆき、存在感あるアクションを見せてくれる。
テレンス・ヤングの演出は、さすがに007シリーズのフォーマットを作っただけあって細かいこだわりが利いている。
列車強盗のシーンで、アラン・ドロンが前の席に座っている男を撃つと、弾が座席を貫通して、後ろに座っている男もタイムラグで倒れる芸の細かさ。三船が盗賊の一人を斬り伏せると、上着から金貨を撒き散らしながら倒れこむこのカッチョ良さ!
追う者(三船&ブロンソン)と追われる者(ドロン)の単純対決に収まらず、コマンチの襲撃の中で敵味方入り乱れての攻防戦など、娯楽映画のツボを見事に押さえた演出手腕に拍手。これが活劇だ!
出演陣は、もう説明不要の三船敏郎。そして主役を立てる時の方が不思議な存在感を発揮するブロンソンが、ふてぶてしくも愛嬌のあるアウトローを男気たっぷりに熱演。前作『さらば友よ』で、すっかりブロンソンに食われてしまったアラン・ドロンは、「今度はクールな悪役でリベンジだぜ!」とばかりにワルの魅力を撒き散らす。そして紅一点のウルスラ・アンドレス嬢、『テキサスの四人』にご出演の時は「男たちって、すぐケンカやドンパチを始めるから野蛮!」などとおっしゃっていたが、もうすっかり荒くれどもの西部に馴染んだご様子。男どもを向こうに回して一歩もひかぬ女丈夫をこれまた好演。そしてキャプシーヌが、サルーンの女将役で出演してるんですねぇ!
子供の頃にテレビで観て以来、幾度となく観てきた映画だが、やっぱり面白い。
ラストの、鉄道の高架線に吊り下げられた日本刀・・・初めてテレビで観た時にも、子供心ながら胸が熱くなったものだ。
あのカットは何度観ても素晴らしい。
【追記】
旧版DVDは持っていないので比較はできないが、画質はとてもいい。おそらくニューマスターであろう。文句なし。
特典映像は全くないが、その代わり日本語吹き替えを収録。かつてテレビで観た世代には嬉しいおまけだ。
CV:三船敏郎(大塚明夫)、C.ブロンソン(大塚周夫)、A.ドロン(野沢那智)、U.アンドレス(深見梨加)