村上春樹のエッセイで、彼が若い頃レコード屋でレッド・ガーランドのLPを買おうとしたら、そこのオヤジから、「若いのにそんなつまんないの買うのやめて、こっちにしなさい。」と、レッドより高いモンクを勧められたという下りがある。確かに一理ある話だが、レッドがモンクよりジャズとしてつまんないとは言い切れないと思うし、そう断言するとジャズの魅力の大事な部分を見落としていることにもなる。レッドもモンクに負けず劣らないジャズの魅力を伝えるピアニストであり、両者は只単に演奏スタイルが違うだけである。
レッドガーランドの特徴は、コロコロ転がるスゥインギーなピアノで、マイルスクインテット時代はこのプレイスタイルで一世を風靡した。キャリアを積むにつれ、段々とブルージーなテイストを増して来て味わい深いプレイをするようになる。そんなレッドの最高傑作とされるのがこのプレリュードでのライブトリオ作だ。リラックスした雰囲気のなかで、小粋で味わい深いレッドのプレイを楽しむことができる。決して大向こうをうならせるような大袈裟なプレイではないが、彼の人柄が滲み出るような誠実なプレイぶりが嬉しい。ベースのJimmy Rowserは控えめなプレイで可もなく不可もなくレッドを盛りたてるのみ。ドラムスのSpecs Wrightは知る人ぞ知るくせ者ドラマー。独特の変拍子でアタックの強いスネアを叩く。ブラシでごしごししばき上げるところも聞きものだ。