「戦車映画」というカテゴリーが存在したら、この映画がベストワンになるだろう。細部描写、心理描写、戦車描写、もちろん物語も含め、ベストオブベストと言える。ソ連軍アフガニスタン侵攻中のソ連戦車兵とムジャヒディン(現地民兵)の対決、いや決闘を描いた映画だ。ムジャヒディンは鹵獲品のRPG7(実物)でT55に立ち向かう。冒頭の音速を越えて飛来する榴弾の音から始まり、この手のマニアックで出来の良い映画にしては(笑)テンポもすこぶる良い。この砲弾飛翔音をジェット戦闘機の音と勘違いしたレビューを見かけた事があるが、書き手は砲弾の飛翔音を知らないのだろう。この映画の出来に対して失礼だ!と言わせてもらおう。
使われる戦車はイスラエル軍のTi67。中東戦争で鹵獲したT54/55を独自改造したものを、映画用に先祖帰りしたように見せている。今はソ連/ロシア戦車の実物が映画に登場するのは全く珍しくなくなったが、この頃はまだ珍しかった。咆哮するT34ゆずりのディーゼル、高温できしむ装甲、火を吐く同軸機銃と、戦車の魅力と恐ろしさを余す所なく見せてくれる。砲は空包を使用しているものと思われ、砂漠な事もあり盛大なブラストが見られ実包射撃かと勘違いする程。監督のケビン・レイノルズは余程の戦車マニアなのだろう。物語の骨子は、米TV映画の『DEATH RACE:戦闘機対戦車』から着想を得たのではないかと思われる。敢えてケチをつけるとすれば、メイン言語が英語な事くらいだろうか。ロシア語吹き替えで観られたら最高なのだが。。(笑)
私は20回以上この映画を観ているし、コアなマニア諸氏も同様だろう。しかし、戦車マニアではない方も十分物語で観られる(事実、軍事を全く解さないジャニーズ好きの私の妹ですら最後まで観たw)。原題『THE BEAST』。見終わった後、このタイトルに籠められた深い意味を考えて欲しい。