アシュケナージとオランダ放送フィルによるレスピーギの「秘曲集」。
オーケストラフアンにとっては「秘曲」ではあるが、「シバの女王、ベルキス」などは木村吉宏らによる編曲により吹奏楽の世界では広く知られている楽曲だ。
しかし、原曲であるフル・オーケストラスコアによる録音は少なく、貴重な録音であることは間違いない。
オットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi 1879-1936)はイタリアの純粋管弦楽曲の重鎮ということになるが、オペラも多く書いており、決して「オーケストレーションの専門家」というわけではない。
また、グレゴリオ旋法や古楽の研究において高い業績を活かしており、その成果を自身の作品に反映させている。
そのため華麗なオーケストラ書法と、古楽的メロディの結実という、稀なる成果をもたらした。
ここで聴かれるのは、その頂点群ともいえる作品だ。
アシュケナージはやや早めのテンポをとっているようだが、金管群の細やかで迅速な反応は聴き応え満点だ。
全般に華やかな楽曲であるが、抒情的味わいを随所に折り込むのは「ローマ三部作」と一緒で、さすがである。
「シバの女王、ベルキス」でファゴットによって奏でられるエスニックでかつ抒情的な旋律は夢想的で美しい。
また各曲で配置される「舞台裏楽器群」の効果も面白い(「シバの女王、ベルキス」の「狂宴の踊り」における舞台裏のテノールはトランペットを用いた版によっている)。
「教会のステンドグラス」はもともとレスピーギ自身のピアノ曲(これもグレゴリオ旋法に基づくもの)の編曲。
「大天使ミカエル」における竜の地上落ちのシーンや、壮麗なオルガンを伴う「偉大なる聖グレゴリウス」など聴き所だ。
録音は同じコンビによる前作(ローマ三部作)と同様で、分解能が高くソリッドで近めのサウンド。やや特に弦の音色などは固め過ぎるところもあり、好悪がわかれるかもしれない。
それにしても、大編成オーケストラのあらゆる音をキメ細かに掬い取った奏者とスタッフの努力は十分実を結んでいると言える。