日経BP企画
筆者であるレスター・ブラウンは、おそらく世界で最も有名な環境論者の一人。1974年に米農務省の官僚を辞めて「ワールドウォッチ研究所」を設立した。
「生態経済学者」が活躍史上最大の投資機会を生む
地球環境の現状を詳細に“診断”し、「世界の健康状態はより悪くなっている」と、世界に警鐘を鳴らし続けている。
日本でも、すでに多くの著作が紹介されている。本書で展開される、目指すべき「エコ・エコノミー」も、前著「エコ経済革命」(1998年・たちばな出版刊)で示された未来の経済社会像の延長線上にある。
それを簡潔に言えば「化石燃料に依存した自動車中心の使い捨て経済から脱し、自然エネルギーを基盤とし、鉄道と自転車中心のリサイクル社会を目指せ」というものだ。
ただ、前著と違うのは、エコ・エコノミーに移行する道筋を、より具体的に示そうと試みていることだ。
例えば、前著で「経済学者と生態学者の現状認識のズレをいかに埋めるかが課題」としていた政策論において、「経済学者と生態学者が協力して、環境負荷のコストを計算し、課税すべき」と一歩進め、近い将来「生態経済学者」なる新しい職業が生まれ、活躍すると予測する。
筆者の真骨頂はここにある。競争力をそぐと産業界から評判の悪い「炭素税」さえ、新しい雇用を生むと積極的に捉える。
このほか、新しい職業として、「風力気象学者」「リサイクル技術者」のほか、「家族計画カウンセラー」「自転車機械工」など、その発想は楽しい。
さらに、「環境革命は、産業革命に匹敵する史上最大の投資機会を生む」と言い切り、自然エネルギーや養殖漁業、人工林などに対する膨大な投資の必要性を強調している。
現代産業社会を否定する環境論者にありがちな、環境の時代が強いる不便さや縮小経済に対する「暗さ」はみじんもない。
自然エネルギーだけで生活水準を維持できるのか、移動手段が自動車から自転車に替わって利便性と雇用を保てるのかなど、さまざまな疑問もわいてくる。だが、筆者にこれらの回答を求めるのは適当ではない。筆者は、エコ・エコノミーの創始者であり、“教祖”は細かいことまで気にしないからだ。
(日経エコロジー 2002/06/01 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
内容(「MARC」データベースより)
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1934年、ニュージャージー州生まれ。ラトガーズ大学、ハーバード大学で農学・行政学を修める。農務省にて国際農業開発局長を務める。74年、地球環境問題に取り組むワールドウォッチ研究所を創設。84年には『地球白書』、92年には『地球環境データブック』を同研究所の年次刊行物として、88年には『ワールドウォッチ』を隔月刊地球環境総合誌として創刊。現在、同研究所理事。2001年5月、アースポリシー研究所を創設して所長に就任。94年、旭硝子財団よりブループラネット賞受賞
福岡 克也
1930年、宮城県生まれ。東京大学農学部卒業、大学院修了。農学博士。環境経済学専攻。76年、日本林学賞受賞。2001年、日本地域学会賞(功績賞)受賞。現在、立正大学名誉教授、鳥取環境大学客員教授、東亜大学大学院環境科学(通信制)教授。社会活動として(財)地球環境財団理事長、NPO政策科学フォーラム理事長
北濃 秋子
1947年、埼玉県生まれ。『地球白書』『地球環境データブック』(共訳)や『脱牛肉文明への挑戦』『食品の研究』など、環境問題を中心とする翻訳を手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)