過剰な暴力はシュールな笑いを生むという見本。低予算ゆえかドンパチシーンは意外と少ないが、予算の制約を逆手に取るかのような、凝った演出が見事。バイオレントだけれど、どこかユーモラスな、個性溢れる怪作を生み出した。
下ネタとオタク知識で埋め尽くされた卑俗な会話が延々と繰り広げられるオープニングが終わり、黒ずくめの男達が格好良く歩いている場面で俳優陣の顔見せが済んだと思ったら、いきなり血まみれになって泣き叫んでいる強盗が眼前に飛び込んでくる(笑)。時間軸を往き来する作品のハシリとも言える本作は、強盗計画と強盗失敗後の逃走を綿密に描きながらも、肝心の強盗シーンを端折るという荒技。観客の期待を裏切り続ける劇的な展開、随所に見られるキレのあるガンアクション、緻密な人物造形、スタイリッシュな劇中音楽、そして「意味のない会話」など、全編に奇妙な魅力が詰まっている。
客観的に見ると、間の抜けた犯罪者集団の内輪もめでしかないのだが、そんなしょうもない話がタランティーノ一流の演出によって“無駄にクールで無駄にコミカル”なクライム・ムービーに変身。この手法は『トレインスポッティング』や『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』に大きな影響を与えていると思う。
ハーヴェイ・カイテルの重厚な演技、ティム・ロスの繊細な演技、マイケル・マドセンの冷たい狂気を孕んだ演技など、役者たちの芝居も見物。個人的にはスティーヴ・ブシェミが演じたMr.ピンクがお気に入り。大物気取りで口が減らないが、実際には小心者なところが微笑ましい。