奥付に書かれているように、本書はポーラ美術館開催の展覧会「レオナール・フジタ ―私のパリ、私のアトリエ」(2011年3月19日―9月4日)の図録を、造本等を変えて一般書籍として刊行したものです。掲載の作品の愛らしさは格別でした。猫も子供も女性もみんなとても魅力的で、この画集を眺めているだけで幸せな気分に包まれるでしょう。アトリエでのフジタの姿を写した土門拳の写真も貴重です。
箱根のポーラ美術館で開催されている展覧会には物凄く関心を寄せていますが、遠くですので本書を観賞することで満足感を得ています。レオナール・フジタ(藤田嗣治)だけでなく、同時代のモンパルナスの住人のパブロ・ピカソ、アメデオ・モディリアーニ、キース・ヴァン・ドンゲン、ジュール・パスキン、マリー・ローランサン、キスリングなどの作品も掲げられており、幅広くフジタの画風の特徴を捉えることができます。
美術書出版に定評のある東京美術の発行ですし、上質の紙を使用したオールカラーの印刷はオリジナルの魅力を十分伝えるものでしょう。
ポーラ美術館学芸員の内呂博之氏の解説が実に詳しく、知っているつもりのフジタの歩みを再確認させていただきました。
本書の構成は、3つに分けられ、1 モンパルナスのフジタ 『素晴らしき乳白色』の誕生、2 アトリエのフジタ 空想への旅、3 小さな職人たち パリへの讃歌となっています。
技法の謎を解く鍵 フジタの「乳白色」をめぐってでは、長らく判明出来なかった乳白色の秘密に迫っています。詳細は本書を読んでいただくとして、地塗り層のタイプとして、シルバーホワイト(鉛白)を主成分としたエマルジョン地を使用しているようです。そして肝心の乳白色の元として、ベビーパウダーの『シッカロール』を使用していたことを土門拳の写真から実証しています。実に貴重な説ですし、見事な解明でした。