ネット上の出会い。一冊の本、共通点から盛り上がる会話。
他愛がなければないほど、貴重な時間。縮まる心理的な距離感。
傾き、募る、気持ち。楽しくて嬉しくて幸せなとき。
メールを送ってから返事が来るまでどきどきして、メールが来たら来たで中身を読むまでどきどきして。
だけど、自分が相手を苦しめるなら、自分なんか消えてしまったほうがいい。
自分が相手を傷つけるなら、疲れさせるなら、私なんかいらない。
好きな人の重荷になりたくない。足枷に、弱点に、邪魔に、負担になんかなりたくない。
好きだからこそ。自分が消えて、相手が幸せでいてくれるのなら、それでいい。
願いは相手が幸せであることだけれども、本当は、二人で幸せになりたい。一緒にいたい。一緒に喜びたい。
何度も切れ掛かった糸を、主人公達は忍耐強く繋ぎなおして、紡いでいく。
この作業は、どちらかが思っているだけじゃだめだ。繋いでいきたいと双方が願っていないと、試みないと、努めないと。
気持ちの描写が丁寧で、聴覚障害の問題もよくこなれており、読みやすいけれども中身は薄くないところが、この作者らしいと思った。
将来までずっと幸せかどうかはわからなくても、幸せな今を謳う、素敵な恋愛小説だった。