本作の最大の強みは、筆者のレイテ戦に対する徹底して公正かつ冷徹な視線にある。戦後の日本の専門家にありがちな、日本軍の戦い方を一方的に糾弾するようなことは一切ない。これは、筆者がフィリピン戦役に従事し捕虜にまでなったこと、そして本書が書かれた時期(まだまだ旧軍に対するアレルギーが強烈だった頃)を考えると、驚異的ですらあるのではないか。ともすると、ミッドウェーあるいはガダルカナル以降の太平洋戦争は米国の一方的な勝利だったと記述する書物が少なくないが、本書は米国の資料をふんだんに使用しつつ、米国もまた厖大な犠牲を強いられていたことを明らかにしている。
ただ、本書は戦記であるとともに、資料としての性格も強く持つ。筆者が入手した一次資料(作戦命令など)を全文引用している箇所も少なくなく、冗長な印象は否めない。不要なところは読み飛ばすなど、メリハリのついた読み方が必要だと思う。