共感できなければ楽しめない、なんて嘘だ。常に本質的なこと以外に目を向けてしまう主人公。僕はこの映画を見て、ラモッタのように生きたいとは決して思わなかった。それでもこの映画は素晴らしい。
ラモッタが恋人とパターゴルフ(?)に行くシーンなど、ストーリー上意味をなさないシーンがいくつかある。しかしこういう部分にこそ、この映画の真髄が隠されているのだろう。ボクシングの元チャンピオンによる「栄光とその後の破滅」の物語、と枠にはめてしまうのもきっと間違いだ。
暴れ者のラモッタなのに、簡単には暴れない。これまでの映画体験から推測される、こういう風に展開するのかなという予想はことごとく外れ、やすっぽい筋書きはすべて拒否される。だからこそ、ぞくぞくする感じが最後まで途切れない。途中からはストーリーはどうでもよくなり、これは映画なんだという感覚もなくなり、デ・ニーロという役者の存在さえなくなり、ただそこにとてつもなく嫌らしい唾棄すべき人間がたしかに息づいていることに気づく。なんという体験だろう。
ただひとつ、試合のシーンには疑問が残る。ボクシング映画はどれもそうだが、あまりにも現実味がなさすぎる。普通の試合はもっと地味なもので、あんなに一方が打ち続けることはない。あそこだけはちょっとマンガっぽく思えてしまう。