この独創的な問題提起を可能としたのが、サブタイトルや帯でうたわれているアフォーダンスという視点の導入である。本来これはJ.J.ギブソンが発案した「協調としての行為が関連する環境の性質」を意味する生態心理学の概念なのだが、日本におけるこの分野の第一人者として知られる著者は、人やモノの表面の「肌理」へと注目することによって、今までの研究蓄積をレイアウト概念の再考察へと生かすことに成功した。絵画、写真、建築、組み版、相撲、リハビリテーション、ダンスなど取材の対象は多岐にわたるが、著者はこれらの事例を「光」「余白」「力」などの切り口から注意深く観察し、それらにうかがわれるレイアウトの本質が「肌理の性質を持った周囲」にあることを説得力豊かに論証していく。D・A・ノーマンの『誰のためのデザイン?』にみられるように、アフォーダンスと表現の関係というと従来は狭義のデザインに限定されていた観があるのだが、本書の問題提起はその裾野を大きく広げ、芸術全般を本格的な考察の対象とする可能性を開いたに違いない。
ところで、対話者の1人として本文中にも登場する鈴木一誌が手がけたブックデザインについてもひと言触れておくべきだろうか? 本書を一読した後、通常どおりの意味でも十分美しく読みやすいそのレイアウトの違った側面に目が止まるようなら、しめたものという気もする。(暮沢剛巳)
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本書は、デザインのノウハウを記した解説本ではない。本書におけるレイアウトは、モノを意図的に動かし、配置したり設営したりする行為を指すわけでもないようだ。
ただ存在する質感を持つ環境=レイアウトの記述ではなく、ヒトや動物の行為との関連で環境を定義しているところが素晴らしい。だからこそ、ヒトが使うデザインのあり様にも示唆を与えてくれるように思う。
筆者は、デザインの専門家ではなく、生態心理学者であるという。
様々な周囲・環境と行為者・受容者の入れ子構造のインターラクションが美しくレイアウトされている。縦書きのテキストのカッコ良さを感じた初めての本かもしれない。
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