これはルー・リードというアーティストの特異性が凝縮された作品だ。
まず第一に、30年以上も前の、商業的には失敗とされた作品を曲順通りに演るというライブが興行として成り立ってしまう例はそうそうないでしょう。しかもそれがルー・リードの過去と現在を見事に繋ぐことに成功しているのだから。
そしてこのステージでの姿には衰えというものがまるで感じられない。アルバムの性格上当然なのかもしれないけど、繰り出される曲たちは“懐メロ”になどなっていないし、過剰な装飾で誤魔化したりもしていない。コーラス隊や管弦楽ユニットが『ベルリン』の雰囲気を醸し出すのに一役買ってはいるけれど、それはあくまでもルーと彼のバンドの添え物に過ぎない。気高くも哀愁の籠ったピアノに導かれるタイトル曲の余韻を「レディ・デイ」のイントロが切り裂くとこなんか背筋がゾクゾクしちゃうね〜。
基本的にこの作品はライブをありのままに収めたコンサート・フィルムだ。随所にジュリアン・シュナーベルが手掛けたイメージ映像が差し挟まれたりもするけど、それはバックのスクリーンに映し出されていたものなので、ここでは徹頭徹尾ステージ上にあったものしか撮られていない。そのステージ上のメンバーたちは決してルックス的にイケてるとは言い難い。でもこの作品は、驚くほどに美しい。
それはきっと『ベルリン』という作品自体が元々持っていた美しさを、このステージに関わった全ての人が表現しきったからだろう、と思う。この“音による映画”が本編ラスト「サッド・ソング」で、美声コーラスと、爆音と言ってもよい演奏が入り混じって締めくくられる様は圧巻!
このライブからはルー・リードという人の歩んできた道までもが透けて見えるけど、同時に今現在のルー・リードの格好よさも伝えてくれる。
還暦過ぎでもこんなことができるんだな〜。