十二歳のキャサリンにはデービットという四つ年下の弟がいます。彼は自閉症。キャサリンは弟の面倒をよく見ていますが、やはりイライラすることは多々あります。両親はなんだかキャサリンにデービットを任せているみたいな気もしてしまうし。
キャサリンはルールを作って弟に覚えさせようとします。自分の気持ちを落ち着かせるためのルールも。つまりそれは、ルールにすることで思考を停止する回避行動なのです。パレアナのジョイゲームの現代版といったところでしょうか。
もちろん、ルールですから、それはぎくしゃくしますし、すべてが巧くいくわけでもありません。そのことで却ってイライラしたり。
そんな時、キャサリンは弟の通院する病院で身体障害者のジェイソンと知り合います。彼は車いす生活で、言葉もうまく話せませんから、奇声に聞こえてしまったりします。ジェイソンは言葉の書かれたカードファイルを持っていて、それを指さしながら会話をします。
絵の上手なキャサリンは色んな言葉に絵を添えたカードを作り、ジェイソンと親しくなります。でも、
お隣に越してきたクリスティ。キャサリンは友だちになりますが、弟のことが少し恥ずかしい。そして、ボーイフレンドだと誤解されたジェイソンが身体障害者だと伝えられない。そんな自分が嫌になるキャサリンですが、気持ちを変えるのは難しい。
こうしたテーマの場合、正しいことは先に決まっていて、だから読者も想像をはみ出させるのが難しく、退屈になりがちですが、この物語は、キャサリンの心の迷いを丁寧に描いていっているので、そんなことはありません。
訳者あとがきを読むと、著者の息子は実際に自閉症児であり、その経験に基づいて物語は織られているとのことですが、その割には距離がとれていて、シンシアの書き手としての資質が良いものであるだろうことがわかります。
障害者解放運動が日本で本格的に始まった七十年代と比べると、「理解」は少しは深まったとは思いますが、情報に関してはまだまだ少なすぎます。
こうした物語で、子どもが興味をもってくれたらとてもうれしいです。(ひこ・田中)