この本は98年に単行本として一度出版されたものに今回加筆し、文庫化したものです。前の本はタイトルがちょっと当時は文字通りオタク向けみたいに思えましたが、中身を読んでみると日本のアニメやマンガが海外、特にヨーロッパ各国に流通していく過程や文化的な摩擦、番組の一方的な改変放送の問題などを非常にきちんと調べ、現地で日本のアニメやマンガを扱う店を開いている人の実情を詳しく紹介してくれるとても真面目な、中身のある本だという印象を受けました。「文化」というものについても作者が自らの主張するところをはっきりと述べており、また、日本では一方的に美化されることの多いヨーロッパの「格差社会」の実情についてもそれらの実態がこの本を読んでいくうちに感じ取れるようになっています。
あれから10年が経ち、日本のマンガやアニメが海外で絶大な人気を博し、ニッポン文化の代表として評価されることは今やさして珍しくないほどになり、現在ならこのタイトルでも以前ほど違和感は感じない時代になったかもしれません。今回の文庫化で一章を追記し、フランスをはじめとしたヨーロッパのそれらの人たちがその後どうなったかを改めて紹介し、今後日本や海外でオタク文化がどうなっていくかについても予測を述べています。
繰り返しますが、この本はオタクという「特殊な」人について述べただけの本ではありません。日本から海外へと発信される「文化」とその過程でのさまざまな事情について真面目に調べて書かれたとても価値ある本です。今改めて読んでみてもとても面白い本なので前の本を読んだことのない人も、ヨーロッパ各国の社会や実情について興味のある人にもおすすめします。