他のレビューでも書かれているように、これは福岡伸一さんの
エッセイ集です。1つのエッセイは2ページ半くらいなんだけど、
それぞれが、非常に充実しており、また、話のオチもある。
この本のなかで、著者は「福岡ハカセ」という名前で登場し、
自分のことを、3人称的に書いている。
ふと、夏目漱石の『吾輩は猫である』を思い出した。
福岡さんの文章のうまさは、あいかわらずで、
まさに、科学者というよりも、「作家」という感じ。
エッセイの内容はいろいろで、
Y染色体の発見の話(「ミールワームの大仕事」)だったり、
ウイルスの話(「放蕩息子の帰還」)だったり、
科学的発見の捏造の話(「空目」)だったり、
子ども時代にムシ採集にあけくれた話だったり、
村上春樹の『1Q84』の謎解きだったり、
料理教室に通ったときの話だったり・・・・
そのどれもこれもが、ほんとうによくできていて、
気がつくと、すぐに福岡ワールドに入り込んでしまう。
そして、軽くて読みやすいエッセイ集でありながら、
「私たちは事実を虚心坦懐に見ているのではない。
私たちは見たいものを見ているのだ。」
といった、科学をするうえで、そして、私たちの日常にも
参考となるような、真摯なメッセージもちりばめられている。
近所の書店では、「この本はカミキリムシの本ではありません」
というPOPがかざられていた。
カミキリムシが好きな人も、そうでない人も、オススメです。