本書は、なかなか評価の難しい本かもしれません。
第1章「刑務所の現実」や第3章「出所者たちのその後」では、受刑者や出所者にインタビューした結果がいくつも記載されています。
また、第4章「出所者のセーフティ・ネットワーク」では自立促進センターや就業支援センターのような出所者の就職や更生を支援する施設を現地でみて、関係者にインタビューしています。
その意味で本書は「ルポ 出所者の現実」というタイトルに合致した内容と言えると思います。
ただ、多くのインタビューを集めてはいるものの、「このインタビューによって何を言いたいの?」とか、「あれ? これで終わり? もう少し追加取材しないの?」というような取材が散見されます。
私は正直言って、たいくつで物足りない部分が多いような感じがしました。
やや辛口の批評を書きましたが、それでもやはり受刑者や出所者や各施設を訪ねて取材していることは評価に値すると思います。
(a)刑務所での作業の報奨金は時給43.5円〜6.1円(熟練度など等級によって異なる)に過ぎず、出所者は出所時にわずかなカネしか持っていない、このことはその後の生活再建が困難になりすぐに再犯を犯してしまう可能性が高い、(b)刑務所の中での職業訓練が十分でない、(c)現状では刑務所は再犯を犯す情報交換や仲間集めの場となっている場合もある、(d)地元住民の反対があって自立更生センターを建設することには困難が伴う、などの指摘はなかなか傾聴に値するものと思います。
やや熟度の低い本であり、ぜひ読むべき本とまでは言えませんが、一読には値すると思います。