本書は福島原発の現地を取材したルポではない。
東電の東京本社の一連の記者会見(事故後の50日間)を再現したものである。
本書からは、確かに、東電の隠ぺいと責任逃れの態度が透けて見える。
情報を小出しにし事故を小さく見せようとするだけでなく、質問をはぐらかし確認作業を怠る不遜な態度も読みとることができる。
著者の解釈や主張はあまり挿入されていない(著者は、東大原子力工学科卒の朝日新聞記者)。
あくまで「記者」たちが何を質問し、東電関係者がどう返答したかを中心に編まれている。
テレビ、新聞で報道されてこなかった会見での「やりとり」が記録されているので、
資料的な価値はあると思うが、本書からは切迫感が感じられない。
(この著者にとっては、「切迫感」など意図するところでないかもしれないが…)
こと原子力発電に関しては、著者が学生時代に受けた面接で面接官に語ったような“バランス感覚”はもはや無用である
だけでなく、有害ですらあるといえるだろう。
今や、原発や放射能と共存できるなどと言う人は、情報操作されているバカか、御用学者と原発フィクサーくらいのものである。
(念のため付記しておくが、本書で著者が「共存しましょう」と唱えているわけではない。)
福島第一の原発事故は、東電と歴代自民党政府による人災である――本書を読んで改めてこの思いを強くした。
なお、本書と同じ朝日新書から『
FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (朝日新書)』(広瀬隆)
という本が出版されている。
まだ読まれていない方には、同書の一読をお薦めしたい。