美しいタイトルと装丁に惹かれて、読みました。カバーのイラストは、はまのゆかさん。中にも、何葉かの挿絵があって、いい味を添えています。こういうYAものを読む時、中の挿絵も、私の楽しみのひとつです。
フロリダ(女)とダラス(男)などという、あまり有り難くない名前をつけられた双子の、ひと夏の心の成長、変化を丁寧に綴った物語です。孤児院で育ち、何度里子に出されても、二人は大人たちの小狡さと拮抗するように、それをかわす術を覚えて孤児院に戻されてしまい、手に負えない問題児としてもてあまし者扱いです。
孤児院の経営者夫妻は、大人の悪いところばかりを集めたような人たち。小心もので、見栄っ張りで、威張り屋で・・・。この人たちこそ、愛し方も愛され方も知らず、どんなふうに育ったのかしら?と首を傾げたくなるような人物です。
さて、フロリダとダラスは、夏の間だけ、ルビーの谷で暮らす老夫婦のもとで過ごすことになります。その時だって、二人ははなから老夫婦のことなど、信じてはいません。これまでの経験から、手に余るような仕事を言いつけられたり、感情に任せて怒鳴られたりするのを覚悟でいやいや行ったのです。頑なな二人に、老夫婦もとまどい、どう接したらよいのか悩んだりもします。しかし、時間が緩やかに流れる、大自然の谷間での暮らしが、フロリダとダラスに初めての経験をさせ、新鮮な感情をもたらすのです。
孤児院の経営者・トレビットの汚い計画、謎めいた男・Zの行動に、物語に緊張が走ります。
双子が、老夫婦のそれぞれと組んで出かけた冒険めいた旅で、4人とも各が、自分の人生に必要な人を再認識し、大切に思う場面では、不覚にも涙が出ました。愛されることを知ったフロリダとダラスが、初めて信じることのできる人と巡り会った幸運と、信じて愛して許して、ふたりが心開くのを待った老夫婦の在り方こそが“ルビーの谷”そのものだと、感動を覚えたのでした。