ルネサンスとは何であったのかについて、対話編で語っているように見せかけて実は塩野七生が一人で話している本。イタリア・ルネサンスをフィレンツェ、ローマ、ヴェネツィアで、それぞれのルネサンスについて語っている。
本書は非常にざっくり切りすぎているのが美点でもあり欠点でもあると思う。まず、そもそもなぜイタリアでルネサンスが真っ先に発祥したのか、なかでもフィレンツェが先駆けたのはなぜなのか、について非常に熱く語っているわけだが、「ネーデルラントについてはどうお考えで?北方ルネサンスも同時期ですよね」という疑問は当然わいてくるわけで、彼女はそこを当然のようにスルーしてフィレンツェ人について語っている。まあイタリアについての本なのだからスルーして当然と言われればそれまでなのだけど、一言くらい触れてもよかったんじゃないかとか、一旦惚れるとその人(民族・団体)しか見ないのは悪い癖だなとか、読者としてもどうしても考えてしまう。その他、細かいところで「そこばっさり切っちゃうのは立体的な歴史像としてまずくないか?」というのは、実は多数ある。だまされないように、というと言葉は悪いが、他の著者のルネサンスの本を読む必要はあるだろう。
それでもやはり本書はおもしろい。たとえば、ルネサンスの走りとしてノルマン朝の神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世と、聖フランチェスコを挙げていた。前者は比較的見る名前だが、後者を挙げている人は見ない。しかし、理由がしっかりとしていて、なるほどと思わせられる。フィレンツェにしろローマにしろヴェネツィアにしろ、興亡の歴史に民族の特質をしっかり織り込んでおり、いつもの塩野節を聞くことができるだろう。他の方のレビューに「気質に逃げられても」というものがあって、それはそれで納得できる話だが、そういう人は塩野七生の本と徹底的にあわないので、今後一切避けるべきだと思う。民族には魂があり、それが栄枯盛衰を左右するというのが彼女の基本思想であるからだ。