廉価版になってやっと購入できました。このバレエの映像としては文句なくファーストチョイスかと思います。
アバド=ストレーレルによる伝説的な「シモン・ポッカネグラ」の名舞台で知られるフリジェリオが美術を担当したというだけあって、すばらしい仕上がりです。また照明の当て方が大変優れているので、その重厚で緻密なセットが克明に表現されていて、しかも深い陰影にも事欠きません。カメラワークも問題なしです。
ヌレエフの振付は作品によると神経質すぎる場合もあるのですが、この作品に関しては原振付への敬意が感じられ、それを損なっているようには見えません。
このバレエの映像ソフトとしては、おそらく80年代のキーロフのものと、このDVDが双璧なのでしょうが、前者の場合、旧ソ連が総力を挙げたスケールの大きさは魅力的ですが、コルパコワの年齢が行き過ぎており、周囲もそれに合わせてかかなりゆったりした踊りになっている点と、映像・音質の古さがネックになっています。このオペラ座の映像はそれに比べると舞台・映像演出ともに技術的な向上がみられ、文句なしです。作品が作品なので、バレエDVD全体でのファーストチョイスといわれても不思議はないです。
ただ、唯一少し不満なのは、指揮が典型的なバレエの伴奏の指揮というか、さらっと流す感じなので、チャイコフスキーの意志的な情念の表出が今ひとつな気がしました。デュポンに限らず、全体的に踊りが淡白に見えたのもそのせいでしょう。私は個人的に大昔のロイヤルのフォンテーンの映像(三幕だけ)とかが好きな人間なので、これは偏見かもしれませんが。