たとえばバーの中で奏でられるフィドル,あるいはマーチングバンドの服装や音,そこかしこにアイリッシュ風味がかいま見られる訳ですが,ノートルダム大学はアイリッシュ系カソリックの学校です.試合前のロッカールームで神父と行われる祈りの儀式にもその辺をうかがうことはできる.「アメリカは移民の国」とよく言われますが,この映画の世界も一つのアメリカの姿,ということでしょう.
主人公の動機付け,特に「なぜノートルダムでなくてはならなかったのか?」については,父が息子を送り出すシーンにヒントがあったと思うのです.ルディにとっての祖父は移民であって,アメリカで成功者になるのだがひょんなことで失敗してしまう.それを見て育った父はひたすら生活の安定を求めてきた,と語る訳ですが,そもそもはその父が,「他(地元のインディアナ大学)の試合は見ない」と言ってチャンネルを変えさせるほどのノートルダム大学のファンだったわけですよね.安定指向の父も実は移民としての矜持を密かに持っていて,それを投影させているのがノートルダム大学のフットボール部ではなかったか,と思うのです.つまり父も戦うアイリッシュ"Fighting Irish"(それはそのままノートルダム大学のチーム名でもある)であって,それを間近に見て育ったルディにとって,ノートルダム大学以外はありえなかった,と.家族みんなでスタジアムに集うシーンは,この一家三代に渡るFighting Irish魂が結実した瞬間であったのかもしれません.
映画本編は,皆さんがいろいろおっしゃっているように,夢を持って努力し続けることの大切さ,をこの上ない形で描いております.個人的には,フィールドの管理係のおじさんがストーリーに実に効いていると思いました.スカウトチームの役割にくさる主人公をかつての自分になぞらえて諭すシーンが布石としてあって,試合前のトンネルで主人公を見送るシーン,この辺りでだいぶ来ていたのですが,主人公がQBサックを決めた後のカット,これで筆者はとどめをさされました.その他,フットボールファンとしては,フィルムスタディ(試合前の対戦相手の分析をこう呼ぶ)ってほんとにフィルム回してたんだな,とか,練習風景を俯瞰で撮ったりするんだな,とか,そういう点も興味深かった.あと,日本語字幕ではフォローしきれなかったみたいですが,ルディを入部させてくれたコーチParseghianがいなくなって,代わりにやってきたコーチDevine,この人はGreen Bay Packersからやってきた,というセリフがあります.Green Bay Packersというのはプロの,NFLの球団です.日本の野球界だといろいろ規程があって,プロ経験者がアマチュアを指導するのはいろいろ難しい(この辺りの事情はNHKの名作土曜ドラマ
NHK フルスイング DVD-BOXの一つの伏線になっている)のですが,アメリカではコーチも普通にカレッジとNFLを行き来する訳ですね.この辺りもアメリカのスポーツ界の一つの姿,と言えるでしょうか.
後にNFLで殿堂入りすることになる名QB Joe Montanaも在学中(映画には登場しませんけど)の時代,実話に「基づく」(さすがに映画ならではの脚色はいろいろあるようですね)感動の名作です.