これタイトルもものすごくいいです.
一般的なモテないオタクを対象とした現実逃避の漫画・小説・ギャルゲーその他萌え産業の搾取アイテムは,ヘタレの主人公がなんだかしらねーけどカワイイ(ロリっぽい)女性(少女?)から一方的に好かれて・・・という王道を歩むものですが,この漫画はそういった既存の搾取品とは一味も二味も違うのです.まず主人公のスペックが酷すぎる.そういう搾取品は「モテない主人公」を歌いながら実際は見るに耐える(普通にカッコいいんじゃない?)っていうレベルですよね.なぜなら読者の分身である主人公がビジュアル的にあんまり酷すぎるとリアルすぎてバーチャルな世界に入り込めないから.でもこの作品は違う.現実を現実として読者に直視させる.「このきったねえ主人公はお前とどこが違うんだ?」と.
だからこの作品は残念ながら連載が打ち切られたのも納得です.現実を直視できない(したくない)読者はわんさかいたと.当然萌え系の漫画だからバーチャル世界のヒロイン月子や現実世界のヒロイン長尾ときったない主人公はイチャイチャするわけですが,それでも読んでいる方は強烈な痛みが襲ってくるわけですよ.カッコ悪い主人公が自分をいやがおうにも現実世界に引き込ませる.その手腕が見事であるなと.
漫画や小説,映画に求めることは人それぞれだとは思うけれど作品から現実世界に戻ったときの爽快感の比重って概して高いですよね.その点から見ても『ルサンチマン』は抜群の後味です.いや,痛いんだよ.でもその痛みがあるからこそ,内面に引きこもるような自己完結を許さない作者のメッセージ性の高さを感じるのです(これホントに長編デビュー作なのかね?).現実よりもバーチャルの優位性を語る主人公の友人越後は確かにカッコいい.でも世界を救って彼は一体どうなるのか? そこを饒舌に語らないラストも素晴らしいと思う.そして最終4巻の表紙の彼女は誰で何をしているのか,そこまでを自分で気付くと,読了したときに思わず涙を流した読者がいたことも納得できます.
本当に素晴らしい作品.現実逃避のモテない男性に是非読んでもらいたい作品です.