テラ戦士と地球の侵略者具象クレルマクの手先‘小陛下’との攻防の終盤戦と異銀河の惑星ルサムントラに舞台を移しての戦いを描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第404巻。本巻の執筆者は技巧派の両雄競演エーヴェルスとフランシスです。苦難の末ようやく地球のポジションを得て勇躍到達した物の、200億人類の消失という衝撃の事実を知って戸惑い、喪失感から目標を見失いつつあるローダン一行に追い討ちを掛ける様に更に新たな暗い翳りが加わりました。それはローダンがテルムの女帝から贈られた胸に帯びるクリスタルによって操られているのではないかというテラ戦士達の疑惑です。
『テラをめぐる戦い』H.G.エーヴェルス著:aクラス火星人タッチャーは昔宇宙の大泥棒から習得した技で自分の姿を見えなくして、囚われの身となったロルヴィクを小陛下から救出すべく一人で地球に残留する。本編ではルナとテラでの分子変形能力者との騙し合いの対決が結果的に死者を出さない痛み分けとなり、ロルヴィクを代用のアミュレットで見事に復活させ、小陛下の弱点を掴み掛けて盛り上がって行き、さあいよいよこれからだ!という所で唐突に迎える結末には一瞬あ然とします。しかも誰もが全く疑問に思っていない様子なのも不思議で、どうか今後きちんと合理的な説明が為されます様にと切に祈ります。『ルサムントラの暗黒』H.G.フランシス著: ローダンはバルディオクの支配する星系にいると考えられる小陛下を狩り出そうと異銀河を探索し、やっと発見した惑星ルサムントラにアトラン、ツバイ、新戦力のシガ星人ミュータントが主力の部隊を派遣する。本編に初登場したコートウェイン・“翡翠”・カーンは、もしもファンの間で「嫌いなミュータント」のアンケートを実施したらロルヴィクを抜いて文句なしで堂々の一位に踊り出しそうな近頃では珍しい最悪のキャラクターです。尊大で我が儘な上にアトランの命令にも背く怖い者知らずの変人ですが、最後に決して諦めない不屈の心意気を見せてやや持ち直します。テラのイルカに似た種族ドールの本能が生んだ悲劇のドラマの全ての責任がテラナーにあるとは思いませんが、テラ戦士には二大超越知性体の代理戦争の傭兵として戦う事の愚かさに早く気づいて本質を見極め賢明な道を歩んで行って欲しいと思います。
本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは小学2年生から50代半ばの現在まで続く趣味のプラモ作りのお話で、最近では年齢からキツイ物があると述べながらも再び取り組もうと頑張る決意で結ばれています。ローダンとアトラン他テラ戦士達の信頼関係に亀裂が生じ先行きに大きな不安を感じる中、ラストで予告される不気味な第四具象ブルロクの動きも非常に気になる所ですが、次巻はどうやら200億人類の消失の謎に関係する物語の様ですので、重苦しい気分を一変させる久々に新鮮なSF冒険活劇の味わいに期待したいと思います。