レビューで本書が正当に評価されていないことを本当に残念に思う。読んだら即身に付くなどといったことを意図して書かれてはいないし、本書で取り上げられる授業を教えているのはビジネススクールではない。むしろハーバードビジネススクール流の「子供向け」ケーススタディへのアンチテーゼとして、30年前にこの教授法は考案された。
教授本人の著書(「最前線のリーダーシップ」あたり)をつうじて、教えられている内容がどういった分野の知見に基づいているか、そもそもどの程度の経験レベルの受講者を前提にしているか、更にどのような内面の変化を迫るものか、を知ったうえで、そうした内容をどのような教授法であれば頭でなく体に覚えこませることができるか、を知るためには、他にない資料。他方、教えられる内容には日本語訳が難しいコンセプトが多く含まれることもあり、訳本で、かつ内容自体より教授法に重点を置いた本書で内容を含む全体像をつかむのは難しい。
この授業の助手や受講者から、同じ教授法を他の国や文化圏に当てはめて教えることに職業人生を賭ける者が、また、そうした教育の価値を認めて教員として雇う大学や教育機関が、多数出ている(本書の著者もその1人)。日本でも全人格的で実践的な教養とか、国際課題への対応を主導する能力といった教育目的を掲げる大学院が幾つか出てきている今こそ、世界でそれなりに評価が確立した手法を扱った本書が顧みられるべきと思う。