超絶に頭のいい人が、その全能力を尽くして、超絶に頭の悪いことに捧げた記念碑的作品。
ヴィクトリア朝時代のスーパーヒーロー(ネモ船長、ジキル博士、透明人間……)が一堂に会して謎の敵と闘う、という本作は、それだけ取れば普通のエンターテイメント作品として成立しそうだが、そこは、かの「アラン・ムーア」。その内容は二重、三重にひねくれている。
驚天動地の展開と息を呑む衝撃はあるが、本作にハッピーエンドはない(リーグ・オブ〜続においてはなお顕著である)。
ヴィクトリア朝時代というのは、「古き良き英国」であり、「紳士が紳士であり、淑女が淑女であった」時代なわけだが、本作におけるヴィクトリア朝は、そうした理想化されたものではない。
深いリサーチと、無数の作品の(ねじ曲がった)引用を含め、軽妙な皮肉の中に、その裏側を魅力的に描き出す。
ここで明らかになる偽善や偏見は、同時に、現代の読者諸氏にも当てはまることであり、爆笑しながらも、どこか背中に寒気を憶えることだろう。
同時に、これは、無数の架空世界、架空人物を全て網羅して、一つの世界に織り込もうとする壮大な試みでもある。過剰に織り込まれた無駄情報は、なんというか圧倒される。
なぞめいた「M」の正体等、重要なプロットは、誰しもわかるネタでありつつ、なるほど!と膝を叩きたくなるだろう。
細かなネタについては、日本語版では巻末に詳細な解説がついているので、お薦め。
さらなる解説本は、英語になるが。
Heroes & Monsters: The Unofficial Companion to the League of Extraordinary Gentlemen
を参照のこと。