リンガー!替え玉★選手権はオリンピックとおなじ年に行われる、知的障害者達のスポーツの祭典「スペシャルオリンピック」を題材とした映画だ。
恋心を抱いているボランティアの女性に見守られながら競技トラックに入場するひとりの男、スティーブ。
障害に負けずひたむきに頑張る男の物語が始まる―――
わけではない。
この映画はパラリンピックの映画と聞いてあなたの頭をよぎったような話の展開とは恐らく大幅に異なるだろう。
なにしろ主人公のこの男、元陸上選手で役者だった経歴を持つバリバリの健常者なのだ。
彼の生来の優しさが不幸に不幸を招きトラックの上に立つしかない運命にあるのだ。莫大な借金のために。(序盤のこの転落っぷりもかなり笑える)
健常者の男が替え玉でしかも賞金目的でスペシャルオリンピックに出場するコメディ映画。
こう見聞きしてしまうと不謹慎極まりないクソのような映画に聞こえてしまうが、それは違う。
この映画のプロデューサーは障害者の友人を持ち、そういった人たちを積極的に起用してきた人物だ。
腫れ物に触るかの如く避けるわけでも自己満足的な演出で美化させるわけでもなく彼らを扱ってきた人物なのだ。
そういう人物だからこそ誰も傷付くことがなく誰でも笑える内容に仕上がっている。このバランス感覚は素晴らしい。
この映画の前では健常とか障害などという人の分けかた自体がナンセンスだと痛感する。
『障害者をネタにした笑い』、そう聞いて心の優しい人はどこか「可哀想だ」という感情を抱いていないだろうか、
そうした行き過ぎた優しさが彼らにとっては一番辛いのではないだろうか。
この「リンガー!替え玉★選手権」はそういうちょっとした意識の壁に正面から向き合いぶち壊し笑いに変えてしまった素晴らしい映画だ。
この映画を機に心のバリアフリーについて考えてみてはいかがだろうか。