マイルス・デイビスの最高傑作と呼ばれているカインド・オブ・ブルーのドラマーは言わずと知れたジミー・コブ。そのドラマーが間近で聴けるというので、わくわくしながら出かけて行った。大分のブリック・ブロック。ここは80年代後半にオープンし、ロン・カーターやドン・フリードマン、スティーブ・キューンなど名だたるミュージシャンのライブが行われた九州のライブハウスのメッカでもある。82歳というジミー・コブは、年齢を全く感じさせないシャープなスティックさばきで、あのマイルスの50年代終わりから60年代初めのサウンド〜リズムを刻んでいた。「いつか王子様が」や「フラン・ダンス」など当時のレパートリーをふんだんに盛り込んだマイルスへのトリビュート・ライブ・ツアーなのだ。トランペットはマイルスに心酔し、医師でありながらトランペッターになったエディ・ヘンダーソン。ミュートを中心としたその演奏は当時のマイルスが乗り移ったかのようなアトモスファーだ。ピアノもベースも健闘していたが、ここはやはりジミーのシェアーなシンバルワークが、マイルスを呼び込んでいるように感じた。改めてドラムの力の大きさを再認識した。ライブ終了後、会場で購入したのがこの新作のトリビュート・アルバム。その日のライブがそのままスタジオで収録されていると感じるくらいの完成度の高いアルバムだ。ジミー・コブはマイルスの歴代ドラマーの中では、やや劣る存在と思っていた。確かに、フィリー・ジョーやトニー・ウイリアムスのような超人的なテクニックはないかもしれない。しかし、82歳のジミーを聴いて、マイルスが彼を雇ったわけを、理解した。手堅く、心地よいリズム、信頼できる人柄。僕はジミー・コブのファンになった。最後に、エディ・ヘンダーソンは、当時のマイルス以上のテクニックを持っている凄いトランペッターだが、カインド・オブ・ブルーを聴くと、やはりマイルスはもっと凄いと思った。それが古典の力なのだろう。