ピアソラは本盤と同名のアルバムを74年に作っているが、本盤はその作品も含む、74年から79年までにイタリアのカローゼッロ・レーベルに残した5枚の音源の編集盤である。僕はこの時期から後の五重奏楽団の作品が最もソリッドで好きなのだが、このカローゼッロ時代というのはピアソラがロックやジャズに最も接近した模索と実験の時期でもあり、彼のキャリアの中では割と特異な時期であるように思う。
音的にはエレキ・ベースを使った軽い聴き応えでタンゴのリズムのタメが希薄なのが特色的だが、それ故に発表当時はアルゼンチン本国よりもヨーロッパで受けたというのも頷ける。(この時期のプロデューサーであるアルド・パガーニはファンにも賛否両論の人物で、契約で揉めてピアソラの遺族と裁判沙汰になっている人物だが、個人的にはこの時代は彼のオーバー・プロデュース気味の時代だったように思う。)ピアソラ自身、晩年のインタビューでジェリー・マリガンとの共作「サミット」は気に入っているものの、「リベルタンゴ」は失敗だったと評価しているように、この時期の作品は色々と複雑な自己評価をしていたようだ。そんなカローゼッロ時代の音源を一気に揃えて聴くのも大変なだけに、最初にお試し的に触れるにはオススメの編集盤と言えるだろう。ただ、表題曲が有名ではあるものの、ピアソラの楽曲・演奏自体は後年に録音された作品の方が凄味があるので、個人的には「ピアソラというアーティストへの入門用」としては本盤は推しません。