現在の日本で平和主義を唱える者の多くには深刻な矛盾がある。とりわけ9条に関しては近年までの日本では、議論することすらナイーブになってしまっていた。平和主義というイデオロギーと形式的な理念が先行して、如何に主権国家としての日本国を守り、国民の安全を守るかという視点が抜け落ちていたためである。著者の櫻井よしこ氏は左寄りの論壇からは「極右翼」のレッテルを貼られることもあるが、私は彼女は右とも左とも考えていない。現実主義の下に国家としての日本のあるべき姿を考えているだけであると思う。彼女は以前に「海外の人々と草の根で交流するのは素晴らしいことであり、異なる価値観を享受し理解しようとすることは大切である。しかしながら、国家と国家の関係においてはよりシビアにならなければならない。」とはっきり言っている。私は別にこの国の核武装や国軍の保持を賛成する立場にはない(日本は米国の戦略防衛構想を応用する形でもっと幅広い意味で国土防衛を考えるべきで核武装は手段の1つに過ぎないと考えている)が、櫻井よしこ氏のおっしゃることは当然のことであると思う。左翼と呼ばれる人々が時には行ってきた言論界での保守に対する攻撃は、それこそ彼らが批判してきたであろう、排除と追放しか容認しないジェノサイドと構造的に似ている。特定の集団を排撃している点で、人種、言語、または性的マイノリティに対する数多の許されざる暴力と変わらないのである。そのような行動をとっている時点で真の平和主義とは程遠い平和教信仰に過ぎない。櫻井よしこ氏はそんな左翼の二枚舌と真っ向から立ち向かう言論人だと思う。