前作『夏の魔法』を読んだとき、北國浩二氏は、端整な小説を書く作家だという印象を持った。饒舌になることのない淡々とした文体は、それでいて情報不足でもない。的確に物事の本質を押さえていく。幾重にも配置された「事実の層」が少しずつ重なり合う様が、そのまま人間関係や人間内面の複雑さに直結している――。本作『リバース』も、この特徴がはっきりと前面に出ていると感じた。
あらすじ紹介だけではわからないが、読み始めてすぐに、「登場人物全員が信頼できない語り手」であることが、読者には明確にわかる仕組みになっている。
「誰が嘘をついているのか?」
「どこに真実が隠されているのか?」
読み手は、自分で推察しながら読むことになる。
だから、ミステリの作法に忠実な、さまざまな伏線の張り方と、その回収に注目すれば、ジャンルミステリ的な読み方が可能になる
一方、その部分を重視せず、全体に流れている複雑な暗いトーンや、論理では制御できない部分、そこからの再生――という部分に注目すれば、これは青春小説、あるいは人間の一内面をとらえた小説として、やはり面白い。
謎解きの部分に注目してジャンルミステリとして読むか、青春小説として読むか。その視点の違いによって、読者には「違う姿の小説」に見えてくるような気がする。タイトルの〈リバース〉という言葉は、そういう意味でも非常に興味深い。