狩撫麻礼とたなか亜季夫のコンビは、
この作品で物語の全体像をあからさまに提示しない。
依頼者がどういった人物なのか。
どんな問題を抱えているのか。
探偵社による調査結果をどう受け止め、どう行動したのか。
作品は探偵社の面々が感じた手触りだけで進行していく。
だから読者は探偵社の面々と同じ戸惑いや疑問を背負わされる。
基本的には事件性のある物語は
ストレートには提示されないという実験的な作品だ。
そのようなドラマチックな事どもは
既に起きてしまったか、これから発生するか。
或いは、この作品に描かれていない場所で起きているのかもしれない。
本来は作品の中心に置かれるべき物語は、
ぼんやりとした輪郭だけで提示されるだけだ。
物語の全体像を読者自身に探らせる試みは、
狩撫作品ではしばしば示されてきたが、
この作品で、そうした傾向がより著しくなったといえるだろう。
狩撫たなか、いいぞ。